新日本建設コラム
2021.06.15
つなぎ融資って何?つなぎ融資のメリットや使い方、注意点や利用時のポイントとは?
夢のマイホームを建築・購入した際、多くの方は住宅ローンを組むことになります。住宅ローンが実行されるのは家が完成してから。そのほかのマンションやアパートなど、分譲で契約する場合であっても住宅ローンは引き渡しのタイミングで融資を受けることになる場合がほとんどです。
ただ、実際には建築に関する費用など、家が完成する前に現金が必要となることもあります。
その際に活用できるのがつなぎ融資です。今回は、夢のマイホームを手に入れようと考えている方が知っておくべきつなぎ融資について解説します。この記事を最後まで読めばつなぎ融資を有効活用できるので、ぜひ上手に使いこなしてみましょう。
つなぎ融資とは?
そもそもつなぎ融資とは何かというと、実際の住宅ローンが実行されるよりも前から利用できる融資のことをいいます。本来、住宅ローンの実行は住宅が完成した際もしくは引き渡しの際などです。しかし、実際にはそれよりも前から建築などにかかる費用の支払いが生じるため、まとまったお金が必要となることもあります。その際に利用できるのがつなぎ融資なのです。
特に着工時や上棟時には工事にかかる費用の約30%を支払わなくてはならない状況もあります。そうなれば経済的負担は非常に大きくなります。特に、着工金や中間金が必要となる場合が多いため、注意しておきましょう。当然、数年前から計画してそれらの費用を補えるほど貯金していれば問題ないのですが、現実にはそれもまた難しい話です。そのため、つなぎ融資で対応するというのが一般的となります。
つまり、つなぎ融資とは住居を建てる前や買う前に必要なお金を一時的に立て替えてくれるローンとなります。
つなぎ融資のメリット・デメリット
つなぎ融資のメリットとしては、自己資金が少ない方でも家を建築・購入できることにあります。本来、住宅を手に入れる際には数百万円単位で貯金をするのが一般的です。しかし、実際には土地代や建物代だけではなく、工事自体にかかる費用も相当な金額となります。
そのため、いくら自己資金を準備していても不足する場合があるわけです。そこで、つなぎ融資があれば、自己資金があまり多くなくても夢のマイホームを手に入れることができます。
逆に、つなぎ融資のデメリットとしては、どうしても金利が高くなってしまう点です。通常の住宅ローンであれば0.5~1.5%ほどの金利なのですが、つなぎ融資であれば3%ほどの金利となります。単純計算で住宅ローンの2~6倍の金利となるため、かなり金利が高いことは否めません。金融機関によっては4%前後の金利に設定しているところもあります。そのほか、融資の金額によっては印紙代が2,000円~6万円ほどかかりますし、住宅ローン控除を受けられないこともあります。さらにはつなぎ融資を行っていない金融機関もあるため、事前に徹底した情報収集が必要です。
まずはつなぎ融資が本当に必要なのか慎重に比較検討する必要があります。もし自己資金が用意できそうな場合は、住居の建築・購入を数年延長するという計画も十分に考えられます。
つなぎ融資の使い方
つなぎ融資に関しては取り扱っている金融機関に相談することで、簡単に利用可能です。しかし、前述の通りつなぎ融資をそもそも行っていない金融機関もあるため、利用する際には注意しておきましょう。
ただ、通常の大手銀行や地方銀行であれば取り扱っていることも多いので、それらの金融機関で相談すれば対応してくれます。なお、つなぎ融資であっても通常の融資と変わらないため、申し込みはもちろん審査に受かる必要が出てきます。審査に合格した場合のみ借り入れ可能なので、事前に審査項目も確認しておきましょう。
もちろん、通常の住宅ローンの審査に通る方であればつなぎ融資の審査にも通る可能性が高いです。まずは利用する金融機関に申し込むところから始めましょう。
つなぎ融資の利用の流れ
つなぎ融資の利用の流れは以下の通りです。ここからは通常のつなぎ融資を受ける流れについて簡単にまとめます。
つなぎ融資を利用する流れ | |
Step.1 | つなぎ融資の申し込み |
Step.2 | つなぎ融資の審査 |
Step.3 | つなぎ融資の実行 |
Step.4 | 土地の調査・購入 |
Step.5 | 着工金・中間金の支払い |
Step.6 | 建物の完成・登記 |
Step.7 | 住宅ローンの実行 |
Step.8 | つなぎ融資・住宅ローンの返済 |
つなぎ融資と住宅ローンは同じタイミングで融資を受けることはなく、別途で実行されます。また、返済に関しても別途で行います。そのため、つなぎ融資と住宅ローンの申し込みから返済までの流れを知っておくことは重要です。
つなぎ融資の返済のタイミングは?
つなぎ融資の返済に関しては住宅ローンのそれとは少し異なります。住宅ローンの場合は月々返済していくのが普通ですが、つなぎ融資の場合は住宅ローンが実行されたタイミングで返済します。
特に住宅ローンが実行されればつなぎ融資を完済することになり、自然と住宅ローンのみの返済が始まります。このタイミングが少しわかりづらいですが、感覚としては住宅ローンでつなぎ融資を完済するという感覚に近いです。
返済自体は別途で行うのですが、住居が完成した際に実行された融資をもってつなぎ融資を返済するということです。
つなぎ融資で発生する費用は?
つなぎ融資は自己資金がない方にとっては便利なものですが、利息が発生するだけではなくそのほかにも諸費用が発生します。
まず、利息に関してはそれぞれの金融機関ごとの金利によって計算されるのが普通です。たとえば、着工金と中間金がそれぞれ600万円で金利が3%だった場合、以下のような計算式となります。
・着工金:600万円×3%×4ヵ月/12ヵ月=6万円
・中間金:600万円×3%×2ヵ月/12ヵ月=3万円
これはあくまでも単純計算したものですが、つなぎ融資の利息だけで約9万円となります。実際には金融機関ごとに金利も異なる他、別途で手数料などの諸費用もあります。手数料も金融機関によって異なるのですが、約10万円前後かかることが多いです。それだけではなく、保険料や登記費用や収入印紙代などもかかってきます。ぜひ、その点も加味して計算しましょう。
つなぎ融資の試算方法
つなぎ融資はこの記事で解説してきたように、着工金と中間金がメインの割合を占めます。これらは工事費用に対して約30%前後となることが多いです。そこに利息や諸費用、土地代や建物の建築に関する費用などを含めると最低でも数百万円~数千万円ほどとなります。これらの試算方法に関しては単純にご自身の借り入れ状況によっても変わるため、一概に説明するのは困難です。
ただ、試算方法としては着工金や中間金を計算し、そこに利息などがどれくらいかかるのかを考えてみるとわかりやすいです。仮に工事にかかる費用が約2,000万円だった場合、着工金や中間金は「2,000万円×30%=600万円」となります。着工金や中間金は別途でかかるため「600万円×2=1,200万円」というお金が必要となります。当然、そのほかにもかかる費用が出てくるため、総額でいくらになるのか計算しなくてはなりません。
なお、つなぎ融資の場合は金利が高く利息も高くなるため、借り入れした金額に対していくらになるのか計算する必要もあります。その場合「借入額×金利÷365日×完成までの期間」で計算可能です。単に着工金や中間金を払えば良いということではなく、そこに利息がプラスされることも考えて計算しましょう。
つなぎ融資を利用する際の注意点
つなぎ融資は一見すると自己資金がない方にとって便利なもののように思えます。うまく活用すればより良い夢のマイホームを手に入れられるでしょう。しかし、利用する際には注意点もあります。以下、簡単にその注意点をまとめます。
1.金利が高い
つなぎ融資は通常の住宅ローンに比べて金利が高く設定されています。これは前述の通りなので説明を省きますが、金利が高いということは利息も高くなるということです。そのため、返済総額なども高くなることを覚悟しなくてはなりません。
2.扱っている金融機関が限られる
つなぎ融資は扱っている金融機関が限られています。大手銀行や地方銀行として知られている金融機関であれば扱っていることもある一方、すべての金融機関が用意しているわけではないので注意しましょう。
3.自己資金が求められることもある
自己資金がないからこそつなぎ融資を利用するという方が多いですが、そもそもつなぎ融資を利用することで発生する諸費用もあります。これも前述の通りですが、利息のほかに手数料や保険料、登記費用や収入印紙代などもかかるため、経済的負担は大きいです。
4.住宅ローン控除が適用されない
住宅ローンにおいては住宅ローン控除という特例が利用可能です。これらを活用すれば所得税や住民税が還付されます。しかし、つなぎ融資には住宅ローン控除が適用されないため、十分な注意が必要となります。
つなぎ融資を使わない選択肢も
つなぎ融資は活用方法によってはとても便利なものなのですが、あえて使わないという選択肢もあります。そもそも金利が通常の住宅ローンに比べて高いですし、そのほかにも諸費用がかかります。それらの負担を考えるのであれば、あらかじめ自己資金を貯めてから家を持つというのが最良の選択です。もちろん、すぐに住宅が欲しいという方もいるので、つなぎ融資の利用は否定しません。しかし、自己資金さえあれば無駄な利息や手数料を支払う必要もありません。
事前に貯金をしておけば建築・購入の費用を賄えるため、住宅ローン自体の負担も軽減できます。そうなれば月々の返済も楽になり、より人生設計の選択肢も増えるでしょう。
自己資金がないという場合であっても、生命保険の解約返戻金などを使って初期費用を賄うことも可能です。掛け捨てではない生命保険であれば解約返戻金が積み立てられているため、つなぎ融資の代替として活用するのもおすすめです。
ほかにも金融機関ではなくご自身や相手の両親・祖父母など、身内に一時金を用意してもらうという方法もあります。身内であれば金利はかかりませんし、返済に関しても両者で話し合って決めることが可能です。身内によっては返済しなくて良いと言ってくれることもあるかもしれません。わざわざつなぎ融資で無駄に諸費用を払うのであれば、そのほかの方法で賄えないか考えてみましょう。
まとめ
つなぎ融資は住宅ローンとは別に住居の建築・購入にかかる費用を補うための融資です。自己資金がない方にとってはそれらの諸費用の支払いだけでも相当な経済的負担となるため、つなぎ融資によって賄うという方も多いです。事実、つなぎ融資は自己資金が少ない方にとって心強い味方となってくれます。
しかし、逆に利息や手数料などの諸費用もかかるため、本当に必要なのかどうか慎重に検討してください。特に、自己資金が貯金できればそれが一番ですし、身内を頼るという方法もあります。ぜひ、それらは専門家なども交えて相談してみましょう。