新日本建設コラム

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2021.06.15

住宅ローンは繰り上げ返済したほうが得?繰り上げ返済で返済額を減らすポイント

住宅ローンは原則として数年数十年という返済が必要となります。しかし、予測していた返済計画よりも余裕があり、繰り上げ返済の可能性が見えてくることもあります。

たとえば、昇格や昇給によって返済額を増やせたり、独立や開業によって大きな成果が出ることによって返済額を増やせたりすることもあるはずです。その場合、繰り上げ返済をすることで、返済総額を減らせる可能性が出てきます。

 

ただ、必ずしも繰り上げ返済すれば良いということではありません。今回は、繰り上げ返済するのがお得なのかどうかを解説します。また、繰り上げ返済の種類やシミュレーションについてもご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

 

繰り上げ返済とは?

そもそも繰り上げ返済とは何かというと、文字通り、本来の返済計画よりも前倒しで返済することをいいます。特に、毎月の返済額とは別に、元金の一部または全部を前倒しで返済する方法を繰り上げ返済とよびます。

 

繰り上げ返済は、元金の一部または全部を予定より早く返済するため、本来かかるはずの利息を減らせるのが大きな魅力です。難しい計算ではわかりづらいので簡単に説明しますが、要は3,000万円の住宅ローンを30年で返済する場合と、繰り上げ返済によって25年で返済する場合とでは利息が大きく異なるということです。この場合、単純計算で5年分の利息が浮くため、返済総額を減らすのに役立ちます。

 

元金自体を前倒しで返済するため、本来かかるはずだった利息を払わなくて済むのです。これにより返済総額を減らすだけではなく、返済期間を減らすことにもつながります。ひいては精神的にも肉体的にも楽になるため、生活に余裕がある方はしばしば繰り上げ返済を選択します。

 

繰り上げ返済の種類

繰り上げ返済には大きく分けて2種類あります。1つが返済期間短縮型で、もう1つが返済額軽減型です。先の説明の通り、繰り上げ返済をすることで返済期間を短縮するのか、返済額を軽減するのかを選べるということです。

 

返済期間短縮型

返済期間短縮型とは、毎月の返済額はそのままで借り入れ時に設定した返済期間を短縮するタイプ。毎月支払う返済金額に変わりはないものの、返済期間が短くなるのが特徴です。そのため、短縮された返済期間に支払う予定だった利息分を支払わずに済みます。利息がかかる返済期間そのものを短縮するため、大幅な利息軽減効果が見込めます。これは返済額軽減型に比べて利息軽減効果も高めです。

 

返済額軽減型

返済額軽減型とは、借り入れ時に設定した返済期間はそのままで毎月の返済額を軽減するタイプです。これは毎月支払う返済金額そのものが減るため、返済額が少なくなるのが特徴です。そのため、軽減された返済額にかかるはずだった利息分を支払わずに済みます。利息がかかる返済額そのものを軽減することで、確かな利息軽減効果が見込めます。ただ、返済期間短縮型に比べると利息軽減効果は低めです。

 

 

返済期間短縮型が向いている人・返済額軽減型が向いている人

返済期間短縮型を選ぶか、それとも返済額軽減型を選べば良いかは、それぞれ向き不向きがあります。以下、返済期間短縮型が向いている人と返済額軽減型が向いている人をそれぞれまとめるので、ご自身がどちらに当てはまるのかを比較検討してみましょう。

▼返済期間短縮型が向いている人

返済期間短縮型が向いているのは、定年までに住宅ローンを完済したい人や老後の生活資金を貯金したい人です。

 

住宅ローンの多くは定年を迎える前に完済できるよう計画する方が多いですが、返済計画によっては定年を越えてしまうこともあります。よく芸能人の方などが40歳にして35年の住宅ローンを組み「75歳まで働かなくてはならない」と嘆いている場面を見かけることもあるかもしれません。

 

しかし、当然ながら年齢を重ねるごとに心も体も弱くなり、若い頃のように働けなくなっていきます。当然ながら仕事で成果を出すにも限界が来るでしょう。そのため、定年までに住宅ローンを完済したい方は返済期間短縮型を選んだ方が安心です。

 

また、住宅ローンの返済計画に無理がある場合、老後の生活資金が貯金できていないという事態に陥りやすくなります。国が出した試算によると老後資金は最低でも2,000万円必要と考えられており、生活水準によってはもっと必要となることもあるでしょう。

 

しかし、現状として老後まで安定収入がある方は稀で、返済途中に病気や怪我で働けなくなることもあります。そうなれば、老後資金を貯金するどころではありません。そのため、老後の生活資金を貯金したい方は返済期間短縮型を選び、少しでも早めに住宅ローンが完済できるようにしておいた方が得策です。

 

 

▼返済額軽減型が向いている人

返済額軽減型が向いているのは、生活費や養育費に備えるために家計を見直したい人や金利が上昇した際の返済額増加を抑えたい人です。

 

住宅ローンは毎月返済していくように計画するのが原則のため、毎月数万円~十数万円単位のランニングコストがかかります。そのため、無理な返済計画をすると生活費や養育費を圧迫する可能性が高いです。

しかし、返済額軽減型を選ぶことによって、月々の支払いを軽減できます。それは生活費や養育費の見直しにつながり、安定した生活を送るのに役立つはずです。特に、現在の家計に不安や心配がある場合は、返済額軽減型で日々必要となる支出を見直すことをおすすめします。

 

また、住宅ローンは金利が複数あり、固定金利であれば問題ないものの変動金利の場合は経済状況によって金利が上昇するリスクがあります。金利が上昇するということは返済総額自体も増加することになるため、総合的に見て負担が増えてしまうわけです。

しかし、返済額軽減型を選べば、金利が上昇した際にも返済額の増加を抑えられます。返済計画に無理がある方は金利上昇で生活が破綻する可能性もあるため、余裕のあるときに返済額軽減型で負担を減らしておくなどの対策が有効です。

 

返済期間短縮型と返済額軽減型のシミュレーション

繰り上げ返済をする場合、返済期間短縮型と返済額軽減型で迷う方も多いです。そのため、それぞれを選択した場合にどのような結果となるのかを予測することが重要となります。そこで、ここからは返済期間短縮型と返済額軽減型のシミュレーションをそれぞれまとめます。あくまでも簡単な計算となるものの、繰り上げ返済を考えている方は併せて参考にしてみてください。なお、条件は以下のような一般的な住宅ローンを仮定します。

 

▼条件

借入金額:3,000万円

返済期間:30年

借入金利:3%

金融機関からの融資が3,000万円、それを3%の金利で30年間借り入れたとすると毎月の返済金額は12万6,481円となります。これを30年間支払えば、借り入れした3,000万円は無事に完済可能です。なお、金利が3%なので返済総額は4,553万円となり、その場合の利息は1,553万円となります。

 

これを繰り上げ返済した場合はその年以降の元金が減るため、併せて利息も減るわけです。たとえば、仮に住宅ローン残高が2,000万円ほど残っている状態で200万円を繰り上げ返済した場合、住宅ローン残高は1,800万円となります。つまり、繰り上げ返済した200万円分にかかる利息を支払う必要がなくなるということです。返済期間短縮型であればより返済期間が短くなり、返済額軽減型であれば毎月の返済額が減ります。

 

ここではあくまでも簡単に計算したものの、より厳密な計算が必要な場合は専門家などに相談することもおすすめです。

 

繰り上げ返済してお得にするためのタイミング

繰り上げ返済して負担を減らしたい場合は、タイミングが重要となります。基本的に住宅ローンは金利が毎月上乗せされた状態で返済するため、繰り上げ返済は早ければ早いほど大きな効果が期待できます。

 

たとえば、住宅ローン残高が3,000万円の状態で繰り上げ返済する場合と1,000万円の状態で繰り上げ返済する場合では、支払う利息が大きく変わるのです。そのため、繰り上げ返済できる余裕がある場合は、極力は早めに行うのがベストなタイミングといえるでしょう。

 

ただし、住宅ローン控除を受ける場合は注意が必要です。

 

繰り上げ返済よりも住宅ローン控除がお得なケースも

住宅ローンは繰り上げ返済することで大幅に負担を減らせる可能性も高いです。しかし、住宅ローン控除を受けている場合、繰り上げ返済することによって戻ってくる金額が減る可能性があります。通常、住宅ローン控除の金額は年末時点の住宅ローン残高の0.7%と設定されているのが普通です。これを繰り上げ返済した場合、年末時点での住宅ローン残高も減ります。そうなれば、本来戻ってくるはずだった金額も減ってしまうのです。

 

そのため、繰り上げ返済する際にはどちらを選択する方がお得なのかを計算しましょう。条件によっては繰り上げ返済よりも住宅ローン控除の方がお得となるケースもあるため、こちらも専門家などに相談することをおすすめします。

 

繰り上げ返済をする際の注意点

繰り上げ返済と聞けば返済期間を短縮できたり返済額を軽減できたり、メリットだけがついつい先行してしまいます。しかし、繰り上げ返済にはデメリットもあります。以下、それらを注意点として頭の片隅に入れておいてください。

 

1.現金を失う

繰り上げ返済は当然ながら本来の返済金額とは別途で元金などを多めに支払うため、現金を失います。収入と支出のバランスが均等な場合、繰り上げ返済をすることで生活が厳しくなる場合もあります。特に病気や怪我、妊娠や出産、介護など人生のさまざまなステージで現金が必要です。そのため、あくまでも繰り上げ返済は余裕がある場合にのみ行いましょう。

 

2.手数料がかかる

繰り上げ返済は誰でも無条件でできるわけではありません。多くの場合は手数料がかかります。手数料は金融機関ごとに異なり、場合によっては数万円~数十万円ほどかかることもあるかもしれません。特に、地方銀行などで住宅ローンを組んだ場合は手数料が高く設定されていることも多いです。繰り上げ返済をする場合はそれら金融機関ごとの手数料にも着目しなくてはなりません。ちなみに、近年増加傾向にあるネット銀行などは手数料がかからないこともあるため、住宅ローンを組む際にはどの金融機関を選ぶかもきちんと選択しましょう。

 

まとめ

住宅ローンに関しては繰り上げ返済をすることが可能です。繰り上げ返済とは文字通り本来の返済計画よりも前倒しで返済することであり、元金を減らすことによって返済期間の短縮や返済額の軽減を狙えます。これらは資金に余裕がある場合は、その後の負担を減らすことにつながります。

 

しかし、繰り上げ返済をするには余剰資金が必要となるほか、手数料がかかります。必ずしも良いことばかりではないため、メリットとデメリットを考えて判断しましょう。特にこれら大切な決断は専門家の意見を仰ぐことをおすすめします。